「実売価格設定」について
不動産を売却することになった場合、まず「売却価格」の設定が最初の大きなポイントになると思います。
不動産は1物4価とも1物6価とも言われ、場面によって物件の評価方法が異なります。固定資産税や登録免許税などの算定は固定資産評価額、相続税の算定は路線価額となりますが、実際の売買の際には結局のところ近隣同種物件の取引事例によることとなります。
この実売価格(取引事例参考)についても複雑なところがあり、隣の土地が坪単価:10万円で売れたからといって、必ずしもこの土地も坪10万円が妥当だとは言い切れません。 土地の価格は広さ、用途、現況、間口、接道方向、前面道路の幅、日当たり、周辺環境などによって大きくことなってきます。よって、個別に価格を設定する必要があるのです。
上の図をご覧ください。両方とも幹線道路に面した角地です。周辺には駅がなく、地域住民の交通手段は車がメインです。道路は2つとも交通量が多く、周辺には店舗、事業所などが点在しています。2年前に500坪の土地の方が坪30万円で取引されました。今回100坪の方の土地を売却しようと考えていますが、査定価格としては坪単価20万円とのことでした。これは、実際にあった事例を基にした話です。面積だけが違って他は同条件のようですが、なぜ実売価格が変わってくるのでしょう?
それはこの地域に求められる需要によるからです。交通量が多い幹線道路に面しているため、住宅用地ではなく事業用地向きです。地方の郊外の場合、交通手段は電車ではなく車なので、駐車場の相当数確保が求められます。
この事例地域の場合だと、100坪では事業用地としては狭いのです。この物件周辺で事業用地を探されている方は多数いらっしゃいましたが、400坪以上求められる方がほとんどでした。立地としてはいいのですが、用途が限られてくるためそれが価格に反映されたのです。
あくまでもこれはある地方郊外の事例であるとお考え下さい。日本全国こうなるとは言えないでしょうし、特に都心部になるとまた話は変わってきます。
今度は住宅用地の事例です。上の図をご参照ください。
ここは閑静な住宅街で、住宅用地としては人気の地区です。周りに高層ビルや大型スーパーなどはありません。
この50坪の土地の方が1年前に坪単価20万円で売却されました。今回すぐ近くの500坪の土地を売却しようと思いますが、査定価格は坪単価10万円とのことでした。
先ほどの事業用地の事例とは違い、今回は面積の広い方が安くなっています。
これも需要によるところです。この地域では事業用地ではなく、50坪程度の住宅用地の方が圧倒的に需要があります。そもそも建築規制等により、この周辺で開設できる店舗・事業所はごく一部に限られているということも多いです。そのため500坪であったとしても、住宅用地としての売却を検討する必要があります。住宅用地として500坪は広すぎるので、道路や水道管を引き込んで土地を分割して売らなければなりません。これを「宅地分譲」と言いますが、宅地分譲は宅建業者(不動産業者、建設会社など)のみ許可されている事業で、一般の方が自ら行うことはできません。宅建業者は道路を作ったり土地を分割したりする経費を差し引いて購入しますので、それが買取価格に反映されるのです。
今回紹介した2つの事例はその地域の需要によるところが大きかったですが、他にもいろんな条件が価格に影響してきます。宅建業者は様々な条件を踏まえた上で、所有者の方に価格を提示します。もちろん最終的に価格を決定するのは所有者の方です。世の中に全く同じ土地や建物というのは存在しません。個別の条件を考慮して価格を設定された方がよろしいでしょう。